好きな漫画100作をランキング形式で紹介する 【前編】

こちらの記事を読んでから、ちまちま作っていたランキングが完成したので投下。

 

 

長くなりすぎてしまったので2分割です。後編は以下。さっくりランキングだけ見たいという方はこちらからどうぞ。

 

選考基準など

選考基準、ルールは以下2点だけ。

  • 主観で、"どちらがより好きか"を基準にソート
  • 作者1人につき1作品だけ

 

ランキング&コメント(1-10位)

 上位10作くらいはコメントの長さを気にせず思いっきり書きたかったので、こちらを前半記事に持ってきました。11位以降は後半記事にて。

 

 

 

10位 超人ロック (聖悠紀)

掲載誌: アワーズ
出版社: 少年画報社
ジャンル:SF
巻数: -巻 (続刊)
出会った時期: 大学生

 ロックは私の一番好きなキャラクターです。最強のエスパーであり、不老不死、歴史の分岐点となった危機に関わっています。開拓惑星ロンウォールの反乱、ディナール戦争、汎銀河戦争、帝国の建国と滅亡など枚挙にいとまがありません。人類滅亡の危機には必ず現れる。まさしく"超人"に相応しい力をもった存在です。しかし、彼は一貫して人間なんです。

 力を過信し、愛する女性を何度も失っていった、若く未熟なロック。あるときは、師として、父として若いエスパー達の導き手となる、老成したロック。良き友人たちや、最愛の妻ミラと過ごした穏やかな日々の中にあるロック。それらすべて、ロックという一人の人間なんですよね。彼を人間として好き。

 そして、永遠の時を生きる孤独。ロックはその中で絶対に絶望をせず、人類の未来に希望を持ち続ける。そのロックを支えるのは、ミラが、友人たちが残してくれた大切な思い出と、繋がり。ミラと友人たちが別の誰かへとロックのことを話すことで、繋がりが生まれ、繋がった人々がまたロックと関わり続ける。その連なりは、人類が続く限り、永遠にロックと共に在る。

今年完結した「超人ロック 風の抱擁」のラスト、ミラがロックへと残したものがその"繋がり"です。永遠の時を生きる者と、そうでない者との関わり。風の抱擁は、そこに一つの答えを与えてくれました。

9位 クロノクルセイド (森山大輔)

クロノクルセイド (Vol.8) (ドラゴンコミックス)

クロノクルセイド (Vol.8) (ドラゴンコミックス)

 

掲載誌: ドラゴンエイジ
出版社: 富士見書房
ジャンル:ファンタジー
巻数: 8巻 (完結)
出会った時期: 高校生

 1920年台のアメリカを舞台に、シスターロゼットと、彼女と契約した悪魔クロノが駆け抜ける。拐われたロゼットの弟ヨシュアを探す旅の中で、共に戦う仲間と出会い、そして、悪魔に関わることで生まれた多くの悲劇を目撃する。そして、決戦の地、魔界パンデモニウムで人間と悪魔、世界のシステムを知ることになる。

 ロゼットの命を消費することで、悪魔としての力を開放できるクロノ。余命が残されていない中での戦い、葛藤しながらも選択していく。でも、クロノだけが戦うんじゃないんです。ただの人間でしか無いロゼットも努力し、傷だらけになりながら、コンビとして助け合い、二人で戦い進んでいく。その生き様に惹かれます。

 そして、駆け抜けた物語の先にあるエピローグ。アズマリアの回想で綴られるロゼットの生涯。長い時間の果てでも、それを受け取ることができたサテラさん。そして、エピローグのラスト、ロゼットの視点で描かれる再会。もう何度繰り返し読んだかもわからない。それでも、一切色あせることなく、私に最高のエンディングを魅せてくれる漫画、それがクロノクルセイドです。

8位 Kiss me ダーリン×3 (水無月真)

Kiss meダーリン!!×3―水無月真作品集 (講談社コミックスなかよし)

Kiss meダーリン!!×3―水無月真作品集 (講談社コミックスなかよし)

 

掲載誌: なかよしラブリー
出版社: 講談社
ジャンル:ラブコメ
巻数: 1巻 (完結)
出会った時期: 大学生

 中学生にもなって何故かクラスで流行するスカートめくりと、そこから始まる初々しい恋のエピソード「スカートめくりラプソディー」。まだキスをしたことない3人の女の子、誰が最初にキスをするかを賭けてバタバタする表題作「Kiss meダーリン!!×3」ほかを収録した、可愛らしい少女漫画。

 漫画人生における、少女漫画の原点。自分の好きな少女漫画、その全てが水無月真先生から始まっています。

 元々、私、水無月先生が二次創作をやっておられた個人サイトに入り浸っておりまして。本作を知ったのはもう少しあとのことでしたが、そのサイトで自分の少女漫画素養の下地が作られました。また、そこで喜多尚江先生を知り、「真夏の国」で少女漫画を初めて体験し、そこから花ゆめへの道も拓かれました。だから、自分の少女漫画の出発点は水無月先生なんです。水無月先生、ありがとうございました。

 と、作品自体についてあらすじでしか触れてませんが、最高に可愛いんです。だって、ラブ度が一番高いのがキス→唇についたグロスをぺろっと舌で拭き取る、ですもん。いや、ラブ度高すぎますよね、鼻血出ますよね。自分の少女漫画における性癖好みを植え付けてくださったのも、水無月先生です。本当にありがとうございました。

7位 ラストゲーム (天乃忍)

ラストゲーム 1 花とゆめコミックス

ラストゲーム 1 花とゆめコミックス

 

掲載誌: LaLa
出版社: 白泉社
ジャンル:ラブコメ
巻数: 6巻 (続刊)
出会った時期: 大学生

 勉強、スポーツもできて、顔も良い、さらに親は金持ち。まさに柳くんの天下。そこに転校してきた、九条さん。一見すると地味な子だが、勉強もスポーツも万能で柳くんの天下は終了。そうして、柳くんからの一方通行のライバル関係が始まり、その気持も次第に恋へと変化していき…。10年に渡る柳くんの片思い、そして、大学生になった二人の関係の変化ととまどいが最高に萌える漫画です。

 ようやく九条さんが柳くんのことを(友達とはいえ)見てくれるようになり、やっとスタートラインにたった本作。九条さんもどう見ても柳のことを好きなんだけど、それにとことん無自覚。タイトルである「ラストゲーム」とは、その気持を自覚させたら柳くんの勝ちというゲーム。

 ほかの女の子の前では、イケメンよろしく上手にエスコートもできる柳くんが、九条さんの前ではどうしようもなく、小学生レベルの恋愛未満でモダモダしてしまう。九条さんを助けたお礼に「何でもする」と言われて「下の名前呼んで」と。そう言っておきながら、「尚人」と呼ばれれば顔を真赤にしながら「やっぱりいい…」と。今日日、小学生ですらもっと進んでるよバカ!最高に可愛いじゃねぇか!

 そんなラストゲームもそろそろ決着がつきそうです。LaLaを購読し始めて3年、毎月の癒やしであり、心の支えが終盤を迎えたのは、正直寂しい。ですが、その終わりはきっと私の心臓と脳みそをゆるゆるに溶かしてくれることでしょう。

6位 蒼き鋼のアルペジオ (Ark Performance)

掲載誌: アワーズ
出版社: 少年画報社
ジャンル:SF
巻数: 9巻 (続刊)
出会った時期: 大学生

 海面上昇、さらには謎の敵 "霧の艦隊"による海上封鎖により、人類の生存圏が狭められた近未来。その閉じられた世界から抜けだした1隻の潜水艦があった。千早群像を始めとする若いクルーたちが駆る、霧の潜水艦「イ401」とそのメンタルモデル「イオナ」である。401と霧の艦隊の戦いの中、群像は世界に風穴を空け、世界を動かしていく…。

 あらすじでは群像だけが主人公かのように書いてますが、彼は群像劇たるアルペジオの主人公の一人にすぎません。群像たちが空けた風穴、そこから人と霧の何かが変わっていく。その変化の中で、日本政府や、群像に敗れた霧の大戦艦ハルナとキリシマ、あるいは霧内部での対立で生まれる複数の勢力などがそれぞれの思惑をもって策動する。それらの動き全てが相互に影響し合い、まさに世界が動いているという感覚。それがアルペジオの最大の魅力でしょう。

 また、霧の人型インタフェース、メンタルモデルたちの変化、それも非常に熱い。特にハルハルこと、霧の大戦艦ハルナ。彼女は群像に敗れたのち、人間の少女 刑部蒔絵に拾われる。ハルナは蒔絵との友情、刑部博士との邂逅、そして死を目撃する。本来、感情など持たなかったはずのメンタルモデルに発生した強烈な衝動。それは読者の心も揺さぶる。心を持たないものが獲得する何か、これほど熱いものが他にあろうか。

 ハルナもまたこの物語の主人公です。彼女と蒔絵が探しに行く人類と霧の未来。彼女たちならきっとそれを見つけるだろう。そして、それがこの物語の膨大な謎を解く、そして、世界を動かす、大きな鍵になる。

5位 ぼくらのよあけ (今井哲也)

ぼくらのよあけ(2)

ぼくらのよあけ(2)

 

掲載誌: アフタヌーン
出版社: 講談社
ジャンル:ジュブナイル
巻数: 2巻 (完結)
出会った時期: 大学生

 ぼくらとオートボットのナナコが、別の星の宇宙船「二月の黎明」号を宇宙へ帰す。2038年夏、団地と宇宙と夏休み。

 1995年の団地で遊んでいたぼく、1999年のデジモンアドベンチャーに熱中していたぼく、2010年の「はやぶさ」の道のりに心打たれたぼく、そして2011年、「ぼくらのよあけ」はあの頃のぼくらをリンクした。本作はそこかしこにぼくらが見てきたものがある。それが近未来SFとして、今のぼくらと2038年を上手く橋渡ししてくれている。

 物語についても話そう。宇宙船を見つけたゆうま達、団地の小学生3人。子供だけの秘密、それはとてもジュブナイルらしい。物語も進み、全て上手く行くと思ったところでの失敗、親に秘密が露見してしまう。でも、この漫画の好きなことは、親たちが障害にならないんですよね。ゆうま達は大人なんて!と思ったろうけど、大人はもっと上手く秘密を守って、計画に協力してくれる。それも、あくまで計画の主体は子供たち。これほど頼もしい協力者は他にいないです。

 そして、二月の黎明の出発と、ナナコとの約束。団地の屋上で、地球を背景としたそのシーンはとても印象的で、こみ上げるものが止められない。大切な友達と、再会の約束をする。とても小学生らしいし、本当に大事な約束。エピローグで、その約束を守りに行くゆうまと、隣にいる彼。彼も友人に会いに行くんだ。本当に綺麗に物語がつながっていく。

 他にも、登場する近未来のガジェットや、親世代の過去、いじめ、人工知能特異点を越える、などなど、この場では語り尽くせない。それだけ1コマ1コマ作り込まれている傑作です。

4位 成恵の世界 (丸川トモヒロ)

成恵の世界 (13) (カドカワコミックス・エース)
 

掲載誌: エース
出版社: 角川書店
ジャンル:SF
巻数: 13巻 (完結)
出会った時期: 高校生

 雨の日に衝撃の出会いをしたあの子、七瀬成恵飯塚和人が告白した彼女は、なんと惑星日本からやってきた宇宙人とのハーフ。彼氏彼女になった二人と、惑星日本を始めとする宇宙人達、それに意志を持った優しい機械、"機族"達と織りなすSFラブコメ

 完結巻が出たのは昨年ですが、今年一番再読した漫画です。再読すればするほど、成恵の世界への愛が高まっていき、ついにはベスト4まで来ちゃいました。

 まず言わねばならいのは、「成恵の世界」は近年では珍しいくらい濃いSF設定を盛り込みつつ、あくまで和人くんと成恵ちゃん、二人のラブコメが軸としてあり続けた漫画です。

 と同時に、二人は最初から最後まで、ただの中学生でありました。二人は確かに様々な非日常に巻き込まれ、今の世界もいくつかの並行世界も救ってきた。でも、それは二人と皆の絆、縁の繋がりとその強さが導いたものです。また、危機に至ったそのとき、隣には鈴ちゃんたちを始めとする機族、人型の優しい機械達がいてくれて、和人くんたちを助けてくれたから。

 最終決戦の最中、機族の戦闘機である麗と蘭はこう言います。

「こんなとき和人くんと成恵ちゃんなら思いもよらない方法で解決してくれたかもね」

「まさか 二人は普通の中学生ですわ そうでなくちゃいけないの」

 成恵の世界13巻 144p

 まさにこの台詞が一貫して"普通の中学生のラブコメ"として描かれた成恵の世界と、人を愛してやまない機族としての優しさと誇りを表しています。彼女たちが本当に愛しい。

 そして、物語のラスト、非日常である宇宙人たちとの別れが描かれます。非日常はいつか帰っていくものであるし、地球人たちは自らの手でその非日常を日常へと変えていかねばなりません。人類は新しい技術を発明し、技術的特異点を越え、先へ先へ。そして、そのときは必ず"天使"たちが傍に在る。人間を大好きでいてくれる彼女たちが。

 最終巻の帯にあるとおり、私の人生に恋とSFを与えてくれた素晴らしい漫画です。丸川先生、あなたの好きなモノを伝えてくれて本当にありがとう。

3位 惑星のさみだれ (水上悟志)

惑星のさみだれ 8 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 8 (ヤングキングコミックス)

 

掲載誌: アワーズ
出版社: 少年画報社
ジャンル:バトル
巻数: 10巻 (完結)
出会った時期: 大学生

 地球を破壊しようとする悪い魔法使いアニムス、それに対抗する獣の騎士団、そして、獣の騎士団のが守護する姫であると同時に第3の勢力として地球を破壊しようとする魔王 朝比奈さみだれとその騎士 雨宮夕日。星を砕くものと、星を守るものの戦い。

 物語は始まりこそ緩やかですが、夕日の成長とリンクしながら、少しずつ加速していきます。そして、終盤にかけての怒涛の展開。成長した夕日へ与えられる試練、魔法使いアニムスとの戦い、さみだれの物語、エピローグ。これが3巻分、1年半に渡る連載がずっと面白すぎた。しかし、読んでいる間の時間間隔としてはあっという間。この速度と密度、惑星のさみだれに惚れ込んでいる要素の一つです。

 また、ラストバトルにおける夕日と、さみだれの表情。ここに水上悟志という漫画家の絵、その力が全て込められているように思います。コマが切り取る瞬間、瞬間、そこに描かれる表情、さみだれの夕日に対する想いがどうしようもなく溢れていて、読んでいるこっちが苦しくなる。息が詰まるし、鼓動も速くなる。そのさみだれに応える、夕日の表情が本当に格好良い。そうだよ、これがヒーローの顔なんだ。

 この漫画のテーマは、ヒーローに、大人になること。大人は子供たちに、ちょっとカッコつけていようが、笑ってみせる。大人は格好良いんだ、楽しいことがあるんだと、子供にそう羨ましがらせてやる。この大人論は、作中で東雲半月を通して、夕日と三日月に託される。そして、当時、夕日と同じく大学生だった私も受け取りました。

 この漫画を夕日と同じ年代で、大学生の自分が読むことができたのは本当に幸運でした。私の生涯にわたって、大人と子供、それを意識する場面で、きっと何度もこの漫画のことを思い出すでしょう。

2位 ドリムゴード (中西達郎)

掲載誌: コミックブレイド
出版社: マッグガーデン
ジャンル:バトル
巻数: 5巻 (完結)
出会った時期: 高校生

 謎の大秘宝「黄金の夜(ドリムゴード)」を求め数多の人間が集まる街、暗黒シティ。暗黒シティに住む、英雄、殺し屋、武装盗賊団、巨大企業、秘密結社etc…彼らの悲願は一つ、ドリムゴードを我が手にすること。この物語は秘宝探求機関"Knights"に所属したクロラット=ジオ=クロックスと、そのパートナーであるカタナ=シラバノ、そして、二人に助けられたREIドール9番機グレイナインがドリムゴードの謎へと迫っていく。

 まずなにより、中西達郎先生は設定厨です。各作品、必ず最終巻には非常に細かい文字で書かれた用語辞典を付ける程度には設定厨です。"Knights"の250人のメンバー全員の設定や、それ以外の暗黒シティの英雄たちの設定、本作で描かれるドリムゴード事件を含む暗黒シティ10大事件など、本編で語られなかった設定は枚挙にいとまがありません。エンディングに至っては、単行本収録版のSide A、雑誌掲載版のSide B、全滅エンドであり作者公式サイトに掲載されたSide Cまで存在しています。

 でも、設定厨でいいんです。私は中西達郎先生が描く世界観と、そこで踊るキャラクター達に惚れ込んでいますから。SF的な起動獣騎と呼ばれるメカや、REIと呼ばれるエネルギーを元とした魔法、宇宙人、怪獣、未来、パラレルワールドetc…というなんでもありのお祭り世界。個性豊かすぎて変人奇人かつバカしかいないキャラクターたち。コイツらが暴れまわる世界が本当に好き。

 背景、メカへの異常な描き込み密度と、ハッタリを効かした場面で切り取る構図、その選択センスは光るものがあります。それがドリムゴード世界とマッチしており、私をどこまでもこの世界に引き込んでいきます。

 そして、クロラットとカタナの関係性が好き。どう見ても、好きあっているだろうし、お互いに信頼しているのに、そういう関係を選ばなかった二人。ただ、ドリムゴードに辿り着くという二人が共有した夢、それゆえにパートナーという関係を選択した。言葉に出来ないけれど、その関係性にとても惹かれます。特に、その関係性を語るエピソードである3巻は、自分の漫画史でも屈指の名シーンであります。

1位 朝霧の巫女 (宇河弘樹)

朝霧の巫女 9 (ヤングキングコミックス)

朝霧の巫女 9 (ヤングキングコミックス)

 

掲載誌: アワーズ
出版社: 少年画報社
ジャンル:伝奇
巻数: 9巻 (完結)
出会った時期: 高校生

 平成稲生物怪録審神者の血を引く天津忠尋、巫女の家系に生まれた稗田柚子。二人が幼き日に、霧の海で交わした約束。北朝南朝、あるいは朝廷とまつろわぬ民、それぞれの思惑が交差し、混沌とした物語に翻弄される。だが、二人を、世界を再び繋ぐのはあの日の約束。

 広島県三次市に伝わる稲生物怪録をベースとし、日本神話、太平記、山人山窩など、難解な伝奇、民俗学要素を盛り込んでいながら、ずっと物語の軸として存在したのは、霧の海での約束。これもまた、伝奇ラブコメ漫画の名に偽りなく忠尋と柚子の物語として帰結しました。ラブコメを軸糸として、これだけの世界を見事に織り上げたウガワさんの手腕を今後も信頼し続けます。

 また、この漫画は薄暗い情愛と執着、欺瞞、怒り、嫉妬、孤独、など人間の抱える後ろ暗い感情が絡みつき、爛れていく様子を描いている。それが上で述べた伝奇要素と上手く噛合い、暗い世界が表されている。特に、コマさんの抱える子への妄執には心が震えた。

 私個人として、この漫画をベストに押し上げた要素も話しておきたい。

 私の出身地は、島根県出雲市。この街は八岐大蛇の顕現、その余波で起きた洪水、黄泉軍の進行と朝廷軍との戦争の中で壊滅する。正直に言おう、震えたし、嬉しかった。この街が嫌いだとか、嫌な思い出があるというわけではない。ただ、自分がいるこの場所が、まさに今読んでいる雑誌の中で破壊されていく、その興奮は生涯忘れません。

 もう一つ、アワーズという雑誌を教えてくれたこと。朝霧の巫女の単行本がどうしても待ちきれず、雑誌で読むようになった。当時載っていたのは、「惑星のさみだれ」や「水惑星年代記」、「ヘルシング」、「トライガン」、「それでも町は廻っている」、「超人ロック」などのそうそうたる連載陣。そして、後に始まる「蒼き鋼のアルペジオ」や「僕らはみんな河合荘」といったベスト100に入れている漫画たち。今も一番好きな雑誌であり続けているアワーズ。この漫画雑誌への橋渡し、そして、そこから先へと自分の漫画世界を広げてくれた朝霧の巫女に、本当にいくら感謝しても足りません。

 ウガワさん、本当に有難うございます。

 

 

 

 以上、1位~10位まででした。11位以降はこちら